分析 斎藤一

第1回 「斎藤に痛点はあるのか」

皆さんは 今まで るろ剣を読んできた中で、斎藤が痛がっている姿を見たことがあるだろうか?ほんの少しでも痛みを感じているかのような、表情を見せる斎藤を思い出せるだろうか?(但し、アニメでは数回見たが ここでは原作だけに絞っている)

斎藤はこれまで 剣心、左之助、宇水、志々雄と戦ったが、どれも無傷ではない。しかも、左之助と相対した時を除けば 結構な深手を負っている(普通の人間なら泣いてしまうくらいの)。

まずは、巻之七 剣心戦、遠心力たっぷりの龍なんとか閃をくらい、道場の壁におでこから思い切り突っ込んでいる。誰でもそうだが、攻撃があたった瞬間は痛そうな顔はしない。痛みというものはその直後にやってくる。残念ながらこのシーンでは、その直後の表情は見ることが出来ない(外に飛んでいってしまったから)。普通の敵ならここで倒れているはずだが、どういう訳か斎藤は 次のシーンでは額から血をどくどく流しつつも「もう殺す」とか言って非常に楽しそうである。

更に、剣心に鞘であごを思いっきりぶっ叩かれても、全然平気。

圧巻は、宇水に脚を刺されたシーンである。(これは、考えただけでも痛そう。)斎藤は冷静に自分の傷口を眺めつつ、宇水を睨み付けて牙突を構える。そして 驚いたことに、2度目に刺された時なんて、笑いながら話しはじめる。

この辺から私は、斎藤 痛点が無いんじゃ・・・と思いはじめる。

更にその後、宇水にやられて包帯を巻いた両脚の、ほぼ 同じ場所を志々雄に斬られる。これも想像を絶する痛さのはずである。にもかかわらず全く無表情なのである、あの男。

これをこのまま放っておくわけにはいかない。

この世の中には、ごく希ではあるが「先天性無痛覚症」というものが存在する。生まれつき痛みを感じないのである。

それでは、斎藤は「先天性無痛覚症」なのか?を、ここで考えてみたい。

痛みを感じないということはどういう事なのか、まず 子供時代を例に取ると、転んでも ぶたれても 痛くないので泣かない。周りからは 非常に我慢強い 良い子であると思われる。しかし、普通の子供は 痛みを知ることによって 何が危険なのかを身を持って学んでゆくのである。それが出来ないということは、どういうことか?痛みを感じてはいなくても体は ぼろぼろで傷だらけになる。

この症候を持つ人の 特徴は 我侭で自己中心的だそうだが、(私はここで大きくうなずいた)これは 無理も無いことだろう。自分が痛みを知らないということは、他人の痛みも解らないからである。

しかし、これが 心の痛みとなるとどうか。「先天性無痛覚症」の人は、心の痛みを感じる感覚も薄いと言われている。では 斎藤はどうだろう。

私が思うに斎藤は、他人の心の痛みというものをちゃんと解っている。それが他人に伝わるかどうかは別にして。

例えば、剣心に対する「神谷の娘にちゃんと別れは言ってきたのか」発言。新月村で村人に対して怒り爆発の操を諌める場面(頭を掴むというのもポイント)。自らの手で斬り(と言うよりは 突き刺し)、やがて死にゆく宇水とのやり取り。そして、志々雄のアジトで剣心と戦い敗れた蒼紫に対する言葉。登場人物達がそれをどう受け止めているかは置いといて、あの斎藤の言動は 確かに他人の心の痛みを解する男のものではないだろうか。

したがって、斎藤は「先天性無痛覚症」ではない(すげ−無理矢理)と思われる。もしかしたら痛みを知らないのではなくて、痛そうな顔の表現の仕方を知らないだけかもしれない。もともと 表情のバリエーションが少ないというのもあるし。

しかし、実を言うと私は 斎藤の無表情が非常に好きである。できればこの先も、痛そうな顔なんて見せないで生きていって欲しいと思っている。